定期借家契約とは

初めて商業施設へ出店する方にとって、頭を切り替えなければならないのは、契約が『定期借家契約』だという事です。一般の貸店舗やアパートの契約は、2~3年ごとに自動更新される『普通借家契約』ですが、それとは異なります。定期借家契約とは、更新が無く契約満了をもって終了する契約です。ほとんどの商業施設はこの契約形態をとっています。ただし双方が合意し、期間満了後も営業を継続するケースはあります。その場合もあくまで「更新」ではなく、新たな定期借家契約を「再契約」する事になります。

なぜ定期借家契約なのか?

その理由は、商業施設自体が期限付きの建物だからです。商業施設は土地の所有者と20年程度の契約を結んで建物を建築しているので、契約が終了したら更地に戻さなければなりません。そのため、テナントに対して『普通借家借契』で貸すことは出来ないのです。

もう一つの理由

リニューアルオープン小

もう一つ理由があります。商業施設はお客様に飽きられないよう、定期的なリニューアルが必要だからです。フロアごとに契約終了時期を揃え、今年は3階をリニューアル、来年は4階をリニューアルといったように、テナントの入れ替えを行いながら、魅力ある売場を保つ事が重要だからです。

メリット・デメリット

メリットデメリットのイラスト

「せっかく売上が順調でも、定期借家契約なら契約終了と伴に閉店しなければならない…」と心配されるのは当然です。しかし、逆を考えてみてください。商業施設のデベロッパー(貸主)が、皆様の店舗を気に入って、「ぜひウチの商業施設に出店して下さい!」とオファーを出せるのは、現在、営業している店舗が、契約終了と伴に閉店するからこそ実現するのです。いつまでも古いテナントが営業していて、新たな人気テナントが出店できないと、施設全体の魅力がどんどん低下してしまい、さびれた商店街のようになってしまうんです。

お宝物件に出会えるチャンス!

アパレル店舗オーナー

このようにご説明すると、商業施設側に都合の良い事だらけのようにも聞こえますが、これは彼らにとっても諸刃の剣なのです。例えば、ある駅ビルのワンフロアをリニューアルします。5年間の定期借家契約で、新たなファッションテナントが10店舗オープンしました。しかし4年後に、売上不振から1店舗が閉店します。その跡に、また5年契約で新たなテナントを誘致できれば良いのですが、このフロアは1年後にリニューアルが控えていますので、残念ながら残りの1年間しか契約を結べません。1年の短期契約となると、賃料を大幅に減額しても、大手テナントはなかなか出店できないものです。ここに中小のテナント企業にとって、普段は高根の花だった人気の駅ビルに出店できるチャンスが生まれます。良い実績を作れば、次のステップにもつながります。

まとめ

古めかしい店舗が、駅前の一等地に長年営業を続けている光景を思い描いて下さい。周辺住民から『何か新しい店舗がオープンしたら便利になるのになあ』と言われても、『普通借家契約』ならば、貸主側から一方的に契約を終了させる事は出来ません。いつか閉店するでしょうが、それは急に到来するため、一握りの大手チェーン店しか情報をキャッチできず、水面下のうちに決まってしまいます。しかし、これが『定期借家契約』であれば事情は異なります。いつ契約が終了するか明確なので、時間に余裕をもったテナント募集を行われます。つまり『新しくお店を始めてみよう!』という、やる気のある若い店舗経営者にとっては、むしろ歓迎すべき契約形態とも言えます。ぜひ自店の良さをアピールして、良い物件を見つけてください。